会社を退職すると、自分で支払わなければならない税金。「退職後に、予想以上に住民税の支払いがあった!」と驚く方は、意外と多いようです。
ここで驚くのは、会社に勤めていた時には、会社がまとめて納付してくれていたため、住民税の実感がわかないからでしょう。
では、実際に会社を退職した場合、住民税の手続きはどうすればいいのでしょうか。会社の退職時期によって、支払い方法や一度に支払う金額が異なってきます。
この記事では、住民税の基礎と、実際の払い方について詳しくご説明します。
そもそも住民税とは
日本にはたくさんの税金があり、それぞれ目的や支払い方法が違います。
今回扱う住民税とは、地域の公共サービスにかかる費用を、その地域に住む人から徴収する税金です。所得がある方は、支払う義務があります。
この章では、税額の決定方法、支払い時期、徴収方法を簡単にまとめました。
会社を退職していても、住民税額は前年の所得によって決定
住民税は「前年課税」の原則があります。
すなわち、前年度の1月から12月まで1年間の所得を基準に今年の住民税が算出されます。
もう少し詳しく言うと、2019年に支払う分の住民税は、2018年分(1月~12月)の所得をもとに、所得控除や税額控除をした後に算出されます。
住民税の支払い時期
上記の課税基準をもとに翌年の支払いが決まります。
例えば2019年度だと、2018年の所得をもとに2019年6月~2020年5月まで、住民税を支払うことになります。
つまり、2018年は就業していたが、2019年は失業や転職活動中という場合でも、住民税を支払う必要があるのです。
また住民税は、1月1日に住んでいる地域に納付することになります。
住民税はの納付方法は「普通徴収」と「特別徴収」
住民税の徴収方法は、「普通徴収」と「特別徴収」の2種類です。簡単に表にまとめてみました。
会社を退職された方は、特別徴収から普通徴収に変化する場合があるので、相違点を見てみてください。
普通徴収 | 特別徴収 | |
対象 | 自営業、農業従事者、無職の方など | 会社に勤務している方(給与所得者) |
納付方法 | 納税者本人 | 事業会社が給料から天引きする |
徴収回数 | 年間で4回(一括も可能) | 毎月の給料から(1年で12回) |
通知 | 納税義務者本人に税額通知書が送付 | 本人には税額の通知なし |
では、次の章で実際にどちらの徴収方法になるのかを見ていきます。
退職後の住民税の納付方法
住民税は前年課税であるため、何月に退職するかによって、支払い方法が変わってきます。住民税は、6月から翌年5月の期間で徴収されており、5月が住民税の納付が終わる月であるため、5月が分岐点となります。
- 1月~5月に退職する場合
- 6月~12月に退職する場合
あなたの退職時期に合わせて、以下をご覧ください。
①1月1日~5月31日の間に退職する場合は特別徴収
会社を退職することが決まったときに、退職する会社にその年に支払う分の住民税を一括で支払ってもらいます。
最終月の給与から天引きという形になります。
例えば3月退職だと、3月分・4月分・5月分を一括で支払います。この時、手取りの給料が低くなってしまうことになるので、事前に退職する会社に確認してみてください。
5月退職であれば、当初の予定通り1か月分(5月分)を給料から天引きしてもらいます。
②6月1日~12月31日の間に退職する場合は普通徴収が一般的
この時期に退職する方は、3通りの選択肢があります。
- (一般的には)普通徴収で納税
- (経済的に余裕があれば)一括で納税
- (次の会社が決まっている場合は)次の会社で特別徴収
- 普通徴収
まず退職月の住民税1か月分は、給与から天引きで会社に徴収してもらいます。そして、退職月以降の住民税を普通徴収に切り替えて納税することになります。
退職先企業に「退職後の住民税は自分で支払います。」と伝えましょう。退職先企業が特別徴収から普通徴収への切り替えをしてくれます。あなた自身が必要な手続きはありません。
後日、お住まいの市区町村役場から住民税の納付書が送られてきたタイミングで、期日までに納付する必要があります。
徴収回数が今までの年12回(毎月)から年4回に変化するため、一回当たりの納税額が大きくなることが注意点です。
- 一括で納税(退職した会社で特別徴収)
経済的に余裕があれば、退職した会社に、退職月の給与と退職金を使って、退職月から翌年の5月分までの住民税を一括で徴収してもらうことも可能です。
この時は金額が大きくなりますが、退職した企業が手続きをしてくれるため、あなた自身は楽でしょう。
- (次の会社が決まっていれば)次の会社で特別徴収
すでに退職後の就職先が決まっていれば、次の就職先に特別徴収をしてもらうことが可能です。この場合は、企業間で手続きをしてもらうことができます。
ただし、退職から次の転職先企業への就職に1か月以上期間が空く場合は、
退職する会社でその分の住民税を天引きしてもらう(特別徴収)、または一度自分で支払う手続きをする(普通徴収)必要があります。
住民税の免除申請は可能?【退職後の支払いが心配な方】
ここまでお読みになった方の中には、住民税の納税額を抑えたいと思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
自治体によっては、「所得が半分以下に減少した」場合に、住民税の免除や減額が認められる場合があります。
お住まいの市区町村の窓口に電話でお問合せしてみることをオススメします。
ただし、減免が認められるのは「非自発的失業」であることが大半です。
非自発的失業とは、退職者の意思に関係なく、会社が倒産したり、解雇されたりした場合をいいます。
自らの意思で退職をした場合は、前年度の所得や退職した年の所得に関係なく、住民税の減免は認められない場合がほとんどです。
経済的な事情などから、税金の減免をしてもらいたい方は、国民保険のほうが認められるハードルが低いです。
まずは、国民保険で減免が可能かどうかを検討してみましょう。
退職後に住民税の支払いで慌てないために
退職時や転職時は給与所得がそれまでよりも減少することがあります。しかし、住民税は前年課税のため、その年の所得に関わらず請求されます。
また、今まで会社に勤めていた方は、住民税がいくらかかるかを想像するのは難しいでしょう。
退職後に普通徴収に切り替わっていたことに気づかず、納付書を見て驚かないように、住民税の制度を理解して、余裕を持って準備をしておきましょう。