現在勤めている会社に退職の意思を伝える時には、退職願・退職届・辞表を提出する必要があります。
しかし、退職を告げる書類として適切なのは「退職願」「退職届」「辞表」のどれでしょうか。迷う転職者の方も多いようです。
そこでこの記事では、退職願・退職届・辞表の違いをご説明した後、退職願と退職届を便箋に書く時のテンプレートをご紹介します。
また、退職願や退職届を作成するときによくある疑問や、退職願や退職届を退出するタイミングを6ステップでまとめたのでぜひ参考にしてください。
この記事で分かること
- 退職願・退職届・辞表の違い
- 退職願や退職届のテンプレートと封筒の書き方
- 封筒・用紙(便箋)等、退職願や退職届にまつわる疑問の解決
- 6ステップで分かる円満退社のための退職願・退職届の提出手順
退職願・退職届・辞表の法律的な違い
退職届・退職願・辞表の違いについては混同している方も多いですが、実際はそれぞれ大きく異なります。
退職願の法律的な定義
退職願は、会社に対して労働契約の解約を願い出るための書類です。
会社側が労働者の退職を承諾した後にはじめて、退職が認められます。
退職願は退職を決定する書類ではないため、会社側(雇用者)が承諾する前であれば撤回することも可能です。
また願い出る時には、口頭で上司に伝えても大丈夫です。「必ず書面の退職願を用意する」というルールはありません。
退職届の法律的な定義
退職届は、会社に対して自分の退職を通告するための書類です。
民法第627条では「労働者は雇用者に対していつでも解約の申し入れをすることができ、雇用は解約の申し入れ日から2週間を経過することで終了する。」と定められています。
したがって法律上、労働者は退職願を出さずに退職届を提出するだけで会社を辞めることは可能です。
しかし一方的に退職を告げると、会社側とトラブルが発生することもあります。
現職の会社を円満退社するためにも、まずは「退職願」の形で出来るだけ早く退職の意思を上司に伝えたほうが良いでしょう。
退職の意思を固めた後に、退職を会社に届け出る正式な書類として退職届を活用することが大切です。
具体的な退職に向けたステップは後述します。
辞表の法律的な定義
辞表は、会社に勤める一般の社員は使うことがない書類です。
社長や取締役といった会社側と雇用関係のない立場の人が、現在の役職を辞める届け出を出す時に使用します。
また公務員が会社を辞める場合には「辞表」を提出して退職を確定させます。
退職届・退職願の便箋と封筒の書き方【例文あり】
退職届・退職願ともに書き方はどの会社・職種でも共通です。「退職の意思」と「退職の日時」をはっきりと書き、それ以外の情報は記載しません。
以下で、退職願と退職届それぞれのテンプレートをまとめました。
退職願例
退職願の文面のポイント9つ
- 一行目に「退職願」と書きます。行の真ん中か真ん中より少し上に書きます。
- 二行目の本文の書き出しとしては「私事」を使います。「わたくしごとで恐縮ですが…」という意味です。便箋の一番下に書きましょう。
- 退職理由は詳細を書く必要はありません。どのような理由の方でも「一身上の都合により」とします。
- 退職日を元号か西暦を使って記入します。数字は漢数字を使用しましょう。
- 退職願は退職を願い出るための書類です。伺いを立てるように「お願い申し上げます」と書きます。
- 退職願を提出する日付を元号か西暦で記入します。
- 退職時の所属を書きます。ご自身の役職名は書く必要はありません。ご自身の氏名が、末尾の社長の氏名よりも下に来るようにするのがコツ。
- 自分の氏名の後に押印をします。シャチハタは避けます。
- 会社の正式名称を記入し、宛名は社長の名前にします。敬称は「様」または「殿」が一般的です。
退職届例
退職届を書く時のポイント8つ
- 一行目に「退職届」と書きます。行の真ん中か真ん中より少し上に書きます。
- 二行目の本文の書き出しとしては「私事」を使います。「わたくしごとで恐縮ですが…」という意味です。便箋の一番下に書きましょう。
- 退職届でも退職理由を詳細に書く必要はありません。どのような退職理由でも「一身上の都合により」とします。
- 退職日を元号か西暦を使って記入します。数字は漢数字を使用しましょう。
- 退職届を提出する日付を元号か西暦で記入します。
- 退職時の所属を書きます。ご自身の役職名は書く必要はありません。ご自身の氏名が、末尾の社長の氏名よりも下に来るようにするのがコツ。
- 自分の氏名の後に押印をします。シャチハタは避けます。
- 会社の正式名称を記入し、宛名は社長の名前にします。敬称は「様」または「殿」が一般的です。
封筒の書き方
退職届や退職願は封筒に入れて渡すのが普通です。
封筒の表面の真ん中には「退職届」もしくは「退職願」と書き、封筒の裏面の左下に所属部署と氏名を記載します。
退職理由は「一身上の都合」
会社側が退職届や退職願を求めるのは、「労働者の自己都合による退職であることを証明し、解雇ではないこと」を文書で公式に示すためです。
したがって、退職者自身が希望して退職する場合は、理由には触れずに「一身上の都合」と記載することが慣例となっています。
「一身上の都合」以外の文言を書き込むと、ほとんどの会社で受理されないので注意してください。
退職届や退職願にまつわる疑問(用紙・封筒など)を解決
縦書き?横書き?
退職願や退職届は縦書きのほうが一般的ですが、横書きで書いても大丈夫です。
上記でまとめた必要事項の記載漏れがないようにだけご注意ください。
便箋の種類やサイズは?
退職願や退職届を作成する用紙のサイズはA4かB5です。
無地の用紙が使いやすいですが、和紙の模様が薄く入っているものや罫線があるものでも使用可能です。
会社によっては、退職届の指定フォーマットがある場合もあります。会社独自のテンプレートがあれば、そちらを使用しましょう。
使用するペンの種類や色は?
ペンは普通のボールペンを使用するのが一般的です。色は黒で統一します。
会社と個人の退職を示すオフィシャルな書類となるため、鉛筆や消えるボールペンの使用は避けましょう。
退職届を入れる封筒の色は?
退職届といったオフィシャルな書類を入れる封筒は、真っ白の封筒が適しています。
色付きの封筒や茶封筒は避けるのが一般的です。
できれば、郵便番号を書く枠が無い封筒が理想的。
封筒のサイズは?
退職届を作成した用紙によって封筒のサイズも変わってきます。
A4の便箋を使用した時は長形3号の封筒を、B5の用紙を使用した時は長形4号を使用して、それぞれ便箋を三つ折りにして封入しましょう。
履歴書は角型3号サイズの封筒を使用して履歴書本体を折り曲げないようにしますが、退職願や退職届は細長い長形の封筒が渡しやすく、胸ポケットにも入るため便利です。
書類を作成しなくても大丈夫?
法律では、書類を作成する義務はありません。したがって口頭で退職の意思を伝えるだけでも退職は可能でしょう。
しかし、口頭で伝えただけだと「言った」「言ってない」といった問題が起こる可能性もあります。書面で退職願・退職届を提出することがご自身を守るためにも大切になります。
パソコンで作成しても大丈夫?
退職願や退職届を作成するときには、会社側に気持ちが伝わりやすい手書きのほうが良いとされています。
退職願や退職届に記載する内容は意外と少ないです。じっくりと手書きすることをオススメします。
メールで提出しても大丈夫?
メールの場合、第三者でも送信できます。
退職願や退職届といった、重要な意思決定を伝える書類は書面で提出しましょう。
退職願・退職届の提出はいつまで?円満退社を目指す6ステップ
①退職の意思を固める
まず、今の職場を本当に辞めていいのかを考えます。
「退職願」は、承諾される前は撤回も可能ですが、一度退職願を出した後の撤回は出来る限り避けたほうが良いです。
ご自身が希望しない部署への異動を命じられる場合もあるためです。
「退職したいが、退職願を出す勇気まではない」という方は、一度直属の上司に「退職の相談」として、ご自身の不満が解消されないかを尋ねてみてください。
②就業規則を確認する
退職の意思が固まったら、直属の上司と話し合いの場を設ける必要があります。
しかし、いきなり上司に相談するのではなく、まずは就業規則を確認してください。
多くの会社では、就業規則に退職の申し出を行うタイミングが記載されています。あらかじめ確認しておくことで、上司との話し合いがスムーズに進みます。
③退職希望日を決める
就業規則を見ながら、退職願に記入する退職日を考えます。
直属の上司に対して、退職日の1~2か月前までに申し出ることを規定している会社が多いです。
ただし、プロジェクトの途中や決算前といった繁忙期に退職を申し出ることは迷惑になりえます。
次の転職先の会社の事情も大事ですが、現職の円満退社も同じくらい大切です。
余裕を持った引継ぎができるように退職希望日を設定してみてください。
④直属の上司に退職を相談
続いて、直属の上司と退職についての面談を行います。
話し合いの場を設ける時は「明日、個人的な相談があるのですが」と言って、上司に時間を作ってもらいましょう。
デリケートな内容のため、会議室など周囲に他の社員がいない場所で行うのがマナーです。
上司がどうしても退職を受け入れてくれない場合は、上司のさらに上の上司に退職を希望する旨を伝えましょう。
ただしご自身で勝手に「直属の上司は退職交渉に応じてくれないだろう」と予想して、いきなり直属の上司を飛ばして、さらに上位の上司に相談することはマナー違反になるので避けてください。
⑤上司の承諾後に退職願を手渡して退職日を決定
退職願や退職届は上司に手渡しで提出します。上司との面談で退職時期の了承が得られれば、面談の翌日に退職願を提出しましょう。
面談の場で提出しないのは、上司と相談のうえで退職願を作成したことをアピールするためです。
⑥退職日確定後、退職届を提出
退職願が承諾されたら、退職届を提出することになります。
退職願や退職届を出すと「今の会社を辞めて、どこに転職するのか」を聞かれることもあると思います。転職先が決まっていたとしても、退職日を過ぎるまでは社内のメンバーには転職先企業を伝えない方が無難です。
また、退職のアナウンスはご自身で行わず、上司から他の社員に発表される形をとりましょう。
退職届と退職願の違いを理解して書類の作成を
転職活動をするときには、現職の会社を退職することが不可欠です。
改めて、退職願と退職届の違いについて簡単に確認します。
退職願は、今の会社に対して退職を願い出る場合に作成します。退職願は「辞めさせていただきたい」という意思を伝える書類になります。
そして退職願を提出して承諾を得たのちに、退職届を提出します。退職届は「会社を辞める」という決定事項を伝える書類になります。
ご自身の会社の就業規則をよく読んで、退職願や退職届を書いてくださいね。