転職を志して、今の会社を退職するとき、気になるのが退職金ではないでしょうか。
「今の会社を退職するときに、いくら退職金を受け取ることが出来る?」
「退職金の手取りはいくらなの?」
こういった疑問を持っていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。
転職活動では、退職金は転職費用の足しになりますし、生涯年収で考えたときに、退職金を今もらうことが得か否かを考えることもあるでしょう。
そこで今回は、退職金の種類、最新のデータからわかる相場、退職金の手取りの計算方法をご説明したいと思います。
そもそも退職金って誰でも貰えるもの?
会社で働いていた人全員が、退職時に退職金を受け取れるわけではありません。
なぜ退職金がもらえる?
退職金は、従業員が退職するにあたって、引退後も安定的な生活を送ることを保障するために支給されるものです。
一般的に、創業期の企業は退職金がなくことが多く、社員数が100人を超えたあたりから退職金を導入する企業が多いようです。
退職金がない場合がある
退職金を支払うことは、企業の義務ではありません。
例えば、あなたが勤続40年で退職金が2000万円の企業に務めていた場合、勤続10年で退職する時に、2000万円の1/4である500万がもらえるというわけではありません。
企業によっては、最低勤続年数が定められており、支払われない場合や減額される場合があります。
そのため、まずは、自分の会社の退職金制度を知る必要があるでしょう。
以下は、お勤めの会社に退職金がある方向けの記事となります。退職金の3つの種類と退職金の相場をご説明します。
退職時のボーナスについて知りたい方は以下もおすすめです。
退職金の種類は大きく分けて3種類
企業によって、採用している退職金が異なります。退職前に、ご自分の会社の退職金制度を一度調べてみることをおすすめします。
企業によっては、複数の制度を採用している場合もあります。
有名な退職金の種類は以下の3つです。
- 退職一時金
- 企業年金
- 前払い制度
それでは、これらについて具体例を挙げながら詳しく見ていきます。
退職一時金
退職一時金とは、退職時にまとめてもらうお金になります。
メリットは、
- 支払われる金額のほとんどが非課税になる
- 勤続年数が長いほど支払われる金額が高くなる
の2点です。
企業年金
企業年金とは、退職後に一定期間や生涯にわたり、企業側が元従業員に一定の金額で年金を支給する制度を言います。
「国民年金」や「厚生年金」のように国が保障してくれるものとは別に、企業側が従業員のために作っている年金制度です。
最近は、「確定給付型」と「確定拠出型」の企業年金が増えてきました。
以下で簡単に特徴と違いを解説します。
- 確定給付企業年金
将来の給付額があらかじめ確定している年金です。
企業側が加入者の年金資産を一括して運用・管理し、退職後に決まった額が加入者に支払われます。
個人別の残高を把握することは出来ませんが、運用リスクは企業側が負います。
- 確定拠出企業年金
毎月(毎年)の拠出額があらかじめ確定している年金です。
企業側は従業員に掛け金を支払い、加入者ごとに資産を運用・管理します。退職後に支払われる金額は、運用実績によって変動します。
個人別に年金口座を持ち、転職時には次の会社に年金資産を持ち運び(移行)することが可能です。運用リスクは加入者が負います。
前払い制度
退職金を現在の給料やボーナスに上乗せして支給する制度です。従業員視点では、退職金が在籍中からもらえることになります。
転職を考えている人にとっては、メリットが大きいでしょう。一方、自分で資産管理をしなければならない点には注意が必要です。
転職時に貰える退職金の相場
退職金の金額に関係する要素は次の3つです。
- 最終学歴
- 勤続年数
- 退職理由
今回は最終学歴別に退職金の相場をお伝えします。
この章では、「年功型の退職一時金の相場」をお伝えします。
以下、自己都合の退職から会社都合の退職までの相場を調べました。(参考:東京都産業労働局「中小企業の退職金事情」)
ここでお伝えする退職金は、高校・大学等の卒業後すぐに企業へ入社し、一般的な能力と成績で勤務した場合の金額になります。
①高卒の場合
勤続年数 | 年齢 | 自己都合退職金(万円) | 会社都合退職金(万円) |
10年 | 28歳 | 89.5 | 121.8 |
15年 | 33歳 | 175.3 | 226.2 |
20年 | 38歳 | 306.1 | 374.7 |
25年 | 43歳 | 468.8 | 547.9 |
30年 | 48歳 | 655 | 759.3 |
定年 | – | – | 1219.1 |
②短大・高専卒の場合
勤続年数 | 年齢 | 自己都合退職金(万円) | 会社都合退職金(万円) |
10年 | 30歳 | 100.2 | 134.1 |
15年 | 35歳 | 199.8 | 254.2 |
20年 | 40歳 | 341.5 | 413.6 |
25年 | 45歳 | 530.0 | 612.9 |
30年 | 50歳 | 739.8 | 835.6 |
定年 | – | – | 1234.5 |
③大卒の場合
勤続年数 | 年齢 | 自己都合退職金(万円) | 会社都合退職金(千円) |
10年 | 32歳 | 124.2 | 168.1 |
15年 | 37歳 | 242.5 | 312.5 |
20年 | 42歳 | 415.4 | 508.9 |
25年 | 47歳 | 638.2 | 742.4 |
30年 | 52歳 | 899.9 | 1020.1 |
定年 | – | – | 1383.9 |
退職金の手取りは?所得税の計算式を紹介!
この章では、退職金の手取りがいくらかを求めたいと思います。
退職金にかかる所得税はいくら?
退職金にも所得税がかかりますが、非課税になる場合も多いです。ご自身の所得税額を計算してはいかかでしょうか。
以下では、計算式を紹介します。
退職金を得たときに支払う所得税額は以下の式で定義されています。
《所得税額の計算式》
所得税額={(A:課税退職所得金額)×(B:税率)}-(C:控除額)
《所得税額の計算式》
所得税額={(A:課税退職所得金額)×(B:税率)}-(C:控除額)
- [A]課税退職所得金額
課税退職所得は、以下の式で求められます。 《課税退職所得金額の計算式》 (A:課税退職所得金額)={(D:退職金額)-(E:退職所得控除額)}×1/2
- [D]退職金額
源泉徴収される前の退職金額になります。
- [E]退職所得控除額とは
勤続年数によって、異なってきます。
勤続年数20年以下 | 40万円×勤続年数(最低80万円) |
勤続年数20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
これで課税所得(A)が求められます。
- 退職金に対する所得税額
所得税額の式を再掲します。
所得税額=(A課税退職所得金額)×(B税率)-(C控除額)
以下の表を参考に計算してみてください。
A課税退職所得金額 | B税率 | C控除額 |
1.000円-1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円-3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円-6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円-8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円-17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円-39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
(参考:国税庁「退職金と税」)
退職金の手取りの計算例
では、実際に手取りはどうなるのでしょうか。
以下にいくつかの事例をご紹介します。実際には、「退職所得控除額」が「退職金額」を上回り、非課税になるケースが多々あります。
①勤続4年、退職金80万円の場合:非課税
- 退職所得控除額=40万円×4年=160万円
- 退職金80万円<退職所得控除額160万円
②勤続25年 退職金1,100万円の場合:非課税
- 退職所得控除額=800万円+70万円×(25年-20年)=1,150万円
- 退職金1100万円<退職所得控除額1150万円
③勤続年数40年 退職金2500万円の場合:課税対象
- 退職所得控除額=800万円+70万円×(40年-20年)=2,200万円
- 課税退職所得金額=(2,500万円-2,200万円)×1/2=150万円
- 課税退職所得金額にかかる税率=5%、控除額0円
- 所得全額=150万円×0.05-0円=75,000円
確定申告は必要か
退職金は、一般的な給与所得とは違う種類の収入と見られているため、通常は自分で確定申告をする必要はありません。
しかし、退職先企業に「退職金に関する申請を各自の責任で行うように」と言われた場合にのみ、注意が必要です。
おわりに
転職の際に、まとまったお金が手に入る退職金は非常にありがたいものです。
ただし退職金は、今すぐに貰うか現在の会社にもう少しとどまってから貰うかによって、支給額が異なる場合があります。
退職先企業と転職先企業両方の退職金制度を理解し、所得税も踏まえたうえで、より良い転職にしてください。