会社に勤めているときは、勤務先が年末調整を行ってくれたため確定申告をしたことがないという方も多いでしょう。年末に保険料支払いの証明書を提出したり、扶養家族に関して申告したりするだけで、会社が代わりに処理してくれていました。
しかし、転職活動をすると確定申告が必要な場合が出てきます。どんな方が転職後に確定申告が必要になるのでしょうか。
会社を退職後に転職先が決まった方と決まっていない方で、少し違いがあります。この記事では転職後に確定申告が必要な方を説明した後、住宅ローン・退職金・社会保険・医療費などの控除について解説していきます。
この記事でわかること
- ご自身が転職後に確定申告が必要かどうか
- 住宅ローン減税・退職金の確定申告のやり方や必要書類
- 各種控除(社会保険・医療費など)の確定申告のやり方
- 3ステップに分けた確定申告の手順
転職後に確定申告が必要な人って?
転職をした場合、確定申告が必要になる人が増えます。
確定申告が必要な方とそうでない方の差は「年末調整」ができたかどうかになります。
確定申告をしなくても良い場合
転職しても確定申告と無縁なのは「転職した年の年末に、どこかの会社に在籍していて年末調整を受けた」場合です。
前職までの給与と転職先の給与を合わせて、転職先企業が年末調整をしてくれています。
確定申告が必要な場合
会社を辞めて転職活動をしていた時期が年末にかかり、年末調整が受けられなかった場合です。
具体的には、次の3パータンが考えられます。
- 前職で年末調整を受ける前に転職し、12月までに再就職しなかった人
- 年末調整を待たずに退職・失業状態になった人
- 転職先の年末調整に間に合わなかった人
所得税は、前年の所得総額に応じた見込み額が給与から源泉徴収されるため、確定申告をすれば払いすぎた所得税が返ってくる可能性が高いです。申告することをオススメします。
住宅ローン減税、退職金、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除の確定申告のやり方は次の章から順にご説明していきます。
その他の確定申告が必要な人
- 給与所得が2000万円を超える人
- 2か所から給与所得を受け取っている人(副業など)
- 源泉徴収されない退職金(外国企業から受けとった退職金など)がある人
- 自営業やフリーランスで所得が38万円を超える人
- 400万円以上の公的年金を受け取っている人
- 株取引で38万円以上の利益を得た人(NISA口座での利益が120万円以下であれば不要)
退職金の確定申告は必要?
ほとんどの方は退職所得の確定申告は必要ありません。退職金は退職所得として所得とは別に扱われ、原則として源泉分離課税だからです。
「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出すれば、源泉徴収によって納税手続きは完了となります。
ただし、以下に当てはまる人は確定申告の義務があります。
- 退職金の源泉徴収がされていない人(外国企業等に勤めていた場合)
- 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない人
住宅ローン減税の確定申告が必要な人も!
転職後も、現在受けている住宅ローン減税の還付は適用されます。前章でもお伝えしましたが、再就職して転職先で年末調整をしてもらった場合は、必要書類を提出するだけで大丈夫です。
しかし、再就職していないといった理由でご自身で年末調整をする場合は、以下の書類を用意して所管の税務署に還付請求をしてください。
- 「給与所得の源泉徴収票」(退職時に勤務先から交付)
- 「退職所得の源泉徴収票」(退職時に勤務先から交付)
- 「住宅ローンの残高証明書」(金融機関から毎年郵送)
その他各種控除の確定申告のやり方(社会保険・医療費など)
上記以外にも、知っておくと確定申告できるものがあります。ここでは「社会保険料控除」「生命保険・損害保険控除」「医療費控除」をご説明していきます。
社会保険料控除
会社を辞めて転職活動をするときに支払う「国民年金」「国民健康保険料」の保険料を納めたときには、社会保険料控除を受けることができます。
会社に勤めていない期間に、国民年金や国民健康保険の保険料を支払っていれば、その証明書を提出してください。
生命保険料控除・地震保険料控除
10月~11月にかけて、年末調整のために保険会社から控除の証明書が郵送で送られてきます。
確定申告の1年間に支払った生命保険料・損害保険料を記入する欄に書きます。
医療費控除
1年間にかかった医療費が多い年は、医療費控除を受けられる可能性があります。
目安としては、1年間の医療費の合計が10万円を超えている場合、医療費控除を受けられます。
医療費控除の対象を求める計算式
「自己負担で支払った医療費の合計」-「保険金(入院給付金や出産育児一時金など)」-「10万円or(その年の課税所得が200万円未満であれば)課税所得の5%の金額」
雇用保険(失業手当)は確定申告不要
退職後、再就職先がなかなか決まらないときには、雇用保険から失業給付金(失業手当)を受け取ることができます。
この失業手当は、次の転職先が決まるまでの生活を保障するための給付です。生きていくうえで必要な生活費とみなされるため。収入には該当しません。
したがって、確定申告をするときに失業給付を受けている旨の申告は不要です。
源泉徴収票がない場合の対処法
ここまで確定申告が必要な人と、確定申告できる各種控除についてご説明してきました。いよいよ確定申告をしようと思って「源泉徴収票がない」ことに気づいくこともあるでしょう。
源泉徴収票は、基本的に退職時に発行されます。前職の収入が分かる「源泉徴収票」を紛失した場合、前職にお願いすれば源泉徴収票の再発行をしてもらえます。
「源泉徴収票をなくした」もしくは「源泉徴収票が手元にない」場合は前職に丁寧にお願いしてみてください。
確定申告を忘れた場合の対処法
2019年の確定申告の期間は「2019年2月18日(月)~3月15日(金)」です。
確定申告の期間中に手続きをすませたいものです。
ただし「年の途中で退職した人で年末調整を受けていない方」は「還付申告」で所得控除を受けることができます。過去五年にさかのぼって、払いすぎた税金を取り戻すことができます。
必要書類は「源泉徴収票」「生命保険・医療保険・地震保険などの控除証明書」「退職後にご自身で支払った国民年金や国民健康保険料、任意継続健康保険の納付書」です。
確定申告の手続きの流れを3ステップで解説【補足】
最後に、確定申告の手続きの流れをご説明します。以下の3ステップで確定申告は完了です。
ステップ①確定申告書を作成する
源泉徴収票を用意して、確定申告書を作成します。
基本的に税務署の閉庁日(土日や祝日など)は、税務署での相談や申告書の受付は行われていません。
ただし一部の税務署では、日曜日でも確定申告の相談や申告書の受付を行ってくれます。(平成31年の場合は2月24日と3月3日です。)
「平日は仕事で忙しい」という方は、お近くの税務署の受付状況を調べてみてください。
ステップ②確定申告書を税務署に提出する
税務署への提出方法は次の3通りです。
- 郵便or信書便で、住所地等の所管税務署に送付
- 住所地等の所管税務署の受付に持参
- e-Taxで申告
②の方法で税務署の受付に持参する場合、税務署の時間外収受箱への投函で提出することも可能です。
また③のe-Taxはネットで確定申告ができるサービスで、メンテナンス期間を除いて24時間申告できます。
ステップ③還付を受ける
確定申告書に記入した金融機関の預貯金口座に還付金が振り込まれます。
通常、確定申告開始時期(2月中旬)に確定申告した場合は3月中旬~3月下旬に、確定申告終了時期(3月中旬)に確定申告した場合は4月中旬~4月下旬に還付金を受け取ることができます。
おわりに
転職に伴って確定申告を初めて取り組む場合は不安が大きいかもしれません。
しかし面倒くさいからと言って、確定申告をしない場合は所得税を払いすぎてしまいます。
今回ご説明したように、控除が認められているものは意外と多くあります。是非手続きを行って、還付を受けてくださいね。