転職活動の最後に待っている「退職手続き」。
転職経験が豊富な方なら一連の流れや手続きもご存知かもしれませんが、転職の経験がない社会人の方は、「退職の流れってどういうものなの?」「退職後の税金や保険、年金手続きってどうすればいいの?」「退職前に有給消化って出来るの?」と様々な疑問が湧くと思います。
今回は、退職に必要な手続き・流れを全てまとめました。この記事を読むことで以下の情報を得られます。
POINT
- 退職の流れ
- 退職に必要な現職での手続き
- 退職に伴う税金・保険・年金の手続き
- 退職前の有給取得の方法
ぜひ、本記事を参考にして円満退職を実現してください。
退職のスケジュール【7ステップで流れを知ろう】
退職の流れ①:転職先企業から内定獲得
転職先の企業に内定をもらったら、入社日を決めなければなりません。
受け入れる企業も出来る限り早く入社してもらえるに越したことはないので、基本的には入社日調整にあまり時間はかけることは出来ません。
そのため、内定獲得後になって混乱することのないように、事前に退職の一連の流れを知っておくことが大切です。
退職の流れ②:現職に退職意思を伝える(2ヶ月以上前)
転職先企業の内定を承諾をして、退職意思が固まったら、まず現職の会社に退職の意思表示をする必要があります。
急に退職することだけを告げ、会社や周囲の社員を混乱させてしまわないよう、事前に退職意思を伝えておくことが大切です。
このステップを抜かしていきなり一方的な退職通告を告げるのは社会人としてNG。ともすると、企業とトラブルになりかねません。
退職意思を企業へ伝える際に特に注意したいのが、「まずは直属の上司に相談すること」です。
周囲の同僚が知ってるにも関わらず、上司だけが知らないような状況では、上司からの理解が得づらくなるかもしれません。
上司に退職の旨を伝えたら、その後に退職日の相談を行い、業務の引き継ぎのスケジュールを組んでいくことになります。
退職届の提出は、退職日が決定した後が一般的です。
退職の流れ③:退職日と入社日を決定する(1ヶ月〜2ヶ月前)
上司と退職に関する相談をし、退職日を決定しましょう。業務の引き継ぎに要する期間や転職先企業への入社日を考慮して決定することになります。
この際、ある程度余裕を持ったスケジュールを組むことを意識してください。
業務の引き継ぎ上のトラブルや転職先企業への通勤のための転居等で、予定通りにやるべきことが進まない可能性もあります。
しかし、転職先の会社も新しい社員の受け入れのために準備をしており、入社日を変更することは簡単ではありません。
多少のトラブルがあっても対処できるように余裕をもたせた退職スケジュールを組むことが重要です。
退職の流れ④:退職届の提出(1ヶ月以上前)
退職日、入社日を決定したら現職の企業へ退職届を提出しましょう。
一般的には会社ごとの退職届のフォーマットがありますので、それに沿って記入し、上司に提出してください。
退職の流れ⑤:業務の引き継ぎ(1ヶ月前後)
退職日までに、現在担当している業務を後任に引き継ぐ必要があります。
退職間際に引き継ぎが終わらないという事態を避けるため、退職日の3日前には引き継ぎが完了するスケジュールを組みましょう。
日々の業務についてのマニュアルをわかりやすくノートにまとめ、後任者以外でも理解できるようにしてください。
退職日の1、2週間前ほどから後任者と一緒に仕事をすることで、後任者の引き継ぎ業務のイメージが湧き、不安点や疑問点が解消されるでしょう。
また、退職後に不測の事態が起きた場合に備えて、退職後の連絡先を教えておくようにしましょう。
退職の流れ⑥:取引先への挨拶回りと担当への引き継ぎ(2、3週間前)
取引先と関係がある場合には、挨拶回りに行き、後任の担当者を紹介するようにしましょう。
退職理由については、具体的な本当の理由を伝える必要はなく「一身上の都合」などで構いません。
また、転職先も伝える必要はありません。
実際に訪問して伝える時間がない場合にはメールで挨拶をしましょう。
退職の流れ⑦:退職当日
最終出社日には、具体的な業務が残らないようにしましょう。会社から貸与された備品の返却や必要書類の手続き等を行います。
この際、「雇用保険被保険者証」「源泉徴収票」「年金手帳」などをしっかり受け取る必要があります。
また、「健康保険被保険者証」「社員証」「名刺」などは会社に返却する必要がありますので注意してください。
次章に、退職に伴い、会社から受け取る必要があるものと会社へ返却する必要があるものを記載したのでチェックしましょう。
現職の会社で必要な退職手続き
現在、在籍している会社との退職手続きには、以下の3点が挙げられます。
- 退職届の提出
- 備品・書類の返却
- 備品・書類の受け取り
1の退職届は、会社から与えられたフォーマットに沿って記入し、提出してください。
次に、会社に返却するものと会社から受け取るものを確認しましょう。
《退職時に企業へ返却するもの》
- 社員証・カードキー・社章
- 名刺
- 通勤定期券
- 社費で購入したもの
- 業務に関わる書類やデータ
- 制服(会社から貸与された服など)
企業へ返し忘れてしまうと後々トラブルになりかねないので注意が必要です。
《退職時に会社から受け取るもの》
- 雇用保険被保険者証(保険証)
- 源泉徴収票
- 年金手帳
- 離職票(転職先が決まっている場合は不要
特に、離職票は雇用保険の失業給付に必要な書類ですので、忘れないようにしてください。
退職時の保険の手続き!条件や受給の流れは?
失業保険の手続き
退職後に転職活動をする方にとっては「失業手当」や「失業給付金」を受け取ることできるかは非常に重要です。
以下に受給条件・受給までの流れ・必要なものを記載したので、参考にしてみてください。
《失業保険の受給条件》
- 失業状態である
- 退職日以前の2年間に雇用保険加入期間が通算12ヶ月以上ある
- ハローワークに求職の申し込みをしている
《失業保険受給までの流れ》
- ハローワークで求職の申し込み
- 7日間の待機期間
- 雇用保険受給説明会と失業認定日に出席
- その後1週間程度で初給付
- 以降は毎月(4週間に一度)の失業認定日に出席、その後1週間程度で給付
《失業保険の受給手続きに必要なもの》
- 離職票1.2
- 雇用保険被保険者証
- 本人確認ができる身分証
- 写真
- 本人名義の普通預金通帳
- 印鑑
- 求職申込書
- マイナンバー関連書類
具体的な失業保険の金額や手続き方法は以下の記事で解説しています。
健康保険の変更手続き
退職すると、それまで加入していた健康保険の被保険者資格はなくなるため、自分で保険手続きをしなければなりません。
もし健康保険の手続きをせずに、事故等で病院に行くことになった場合、高額な医療費を支払わなければならなくなります。
こういった事態を防ぐためにも、下記のいずれかの方法で健康保険の切り替え手続きをしておきましょう。(※いずれも負担金は3割です。)
①任意継続被保険者制度を利用する
これは、退職後も在職中と同じ健康保険の被保険者資格を継続できる制度です。
退職の翌日から20日以内に、加入していた健康保険組合または居住地域の社会保険事務所で手続きをする必要があります。
《任意継続被保険者制度の利用に必要なもの》
- 健康保険任意継続被保険者資格取得申請書
- 住民票
- 1ヶ月分の保険料
- 印鑑
②国民健康保険
これは、市区町村が保険者となる健康保険です。
退職後14日以内に、住所地の市区町村役所の国民健康保険担当窓口で手続きを行うことが原則ですが、もし遅れてしまっても手続きは可能です。
《国民健康保険の切り替えに必要なもの》
- 健康保険の資格喪失日がわかる証明書
- 健康保険被保険者資格喪失証明書、退職証明書、離職票農地どれか一つ
- 各市町村で定められた届出書
③家族の扶養に入る
もし、あなたの年収が130万円未満の場合、家族の健康保険の被扶養者になることができるかもしれません。
条件は他にも複数ありますので、家族の健康保険の保険者に問い合わせてみましょう。
《家族の被扶養者になるために必要なもの》
- 世帯全員の住民票
- 源泉徴収票
- 退職証明書または離職票のコピー
- 失業保険屋年金を受給している場合は、受領金額のわかるもののコピー
保険料の詳細が知りたい方は以下の記事もチェックしてみてください。
退職時の税金手続き!住民税、所得税支払いの流れは?
①住民税
住民税は退職した月によって対応方法が変わるので、注意が必要です。
住民税は、基本的に5月が区切りの後払い、かつ前年の収入額を元に決定するため、退職後は区切りである5月までの残額を自分で納めなければなりません。
退職後の住民税支払いは、退職時期によって以下の2パターンに分かれます。
A:6〜12月に退職した場合
退職月の住民税は給与から点引きで徴収してもらい、退職月以降に残っている住民税を自分で納税します。
退職前に支払い方法の変更を会社に依頼すると、自治体から個人で納税するための納税通知書が送られてきます。
また、会社に申請すれば、退職月から翌年の5月分までの住民税を退職月の給与または退職金から一括で徴収してもらうこともできます。
B:1〜5月に退職した場合
1月から5月の間に退職した場合は、原則として退職月の給与から5月分までの住民税を一括で徴収されます。
退職した月の給与、もしくは退職金の金額が、徴収される金額よりも少ない時は普通徴税に変更してもらい、自治体から送付されてくる納税通知書を使って自分で支払うことも可能です。
②所得税
所得税は事前に1年間の総収入を想定し、それを月割りにして源泉徴収されています。
そのため、退職後1ヶ月以上の失業期間がある場合には、所得税を余分に収めることになってしまいます。
余分に支払ってしまった金額は還付を受けることができますが、年内に再就職したか否かによって手続きの方法が変わってきます。
A:年内に再就職した場合
転職先の偉業で年末調整を受けることができます。
手続きのため、以前勤めていた会社から「給与所得の源泉徴収票」を受け取る必要があるので注意してください。
生命保険・医療費等の各種控除証明書と以前の会社の源泉徴収票を提出して手続きしてもらいましょう。
B:年内に再就職しなかった場合
翌年の確定申告の時期に居住地を管轄している税務署で確定申告を行なってください。
12月に再就職が決まったが年末調整に間に合わなかった場合も自分で確定申告をすることになります。
その際は確定申告書とともに前の会社の源泉徴収票と各種控除証明書、印鑑が必要になりますので、用意しておきましょう。
退職時の年金手続き!国民年金切り替えの流れは?
在職中は「第2号被保険者」として会社が手続きをしてくれていますが、退職後は「第1号被保険者」となるため、手続きを行い、自分で年金を納める必要があります。
下記の項目に注意して手続きを進めましょう。
- 退職後14日以内に住所地の市区町村役場に行って、自分で「国民年金」への種別変更をこなう
- 「社会保険」が完備された企業に就職した場合には、職場に「年金手帳」を提出
- 保険料の納付が難しい場合には「国民年金保険料」の免除制度がある
退職前に有給休暇の取得はできる?
退職時の有給休暇の消化は可能
有給休暇には、「付与日から2年経つと時効」という決まりがありますので、時効になっていない限り、有給取得することは可能です。
また、会社側には社員に給休暇をとって欲しくないタイミングで発することのできる「時季変更権」がありますが、これは退職が決まっている相手に対して行使することはできません。
有給休暇の残り日数を把握し、出来るだけ会社に迷惑をかけないように有給休暇を消化してください。
円満退職のためにも引き継ぎはしっかりしよう
有給休暇を消化することは権利として可能ですが、事前の対応や連絡もなしに休暇を取ってしまうと会社に多大な迷惑をかけてしまう可能性があります。
転職後に影響しないよう、後任への業務引き継ぎはしっかりと行いましょう。
退職日が決まったら、残りの有給休暇日数を把握し、しっかりと消化できるよう、引き継ぎも考慮した退職スケジュールを組みましょう。
もし有給休暇がとれない場合買取は可能?
原則として、有給休暇の買取は認められていません。
有給休暇取得の目的は「身体と精神を休ませることによって労働者の健康を守る」ことにあります。
そのため、法律で認められた日数分の買取はできません。
しかし、以下の場合には買取が認められる場合があります。
《有給休暇の買取が認められるケース》
- 法律で認められた日数より多く有給休暇を与えている場合に、その超えた部分のみを買い取ること
- 2年の時効ですでに消滅した有給休暇の買取
- 退職時に残っている有給休暇の買取
上記の場合には、買取を行うことができますが、注意しておきたいのは「有給休暇の買取は会社の義務ではない」ということです。
買取が実際に行われているのか、またその買取の金額等も会社によって違ってくるため、会社に確かめる必要があります。
おわりに
今回は、退職の一連の流れと、それに伴って必要になってくる手続き等について解説しました。
転職活動中は忙しく、内定獲得後の動きにまで気が回らなかもしれません。
しかし、転職が決まった後は様々な煩雑な手続きが必要になってくるため、非常に混乱してしまいやすいです。
有給休暇も十分に消化し、万全な状態で転職先の企業では楽ことのできるよう、ぜひ本記事を参考にして退職の流れを掴んでください。